台所に漂う花椒の香り、中華鍋から立ち上る湯気、油が弾けるあの音。東京のマンションのキッチンでも、本場の味は再現できるんです。中華料理は職人の技だけで作るものじゃない。今日は、自宅のIHコンロでできる本格派の味を、私が北京で習得したコツと共に伝授します。
まずは麻婆豆腐から。豆腐を崩さない秘訣は「豆腐を切る前に塩水で10分さらすこと」。これで身が締まる。本場の辛さを求めるなら、豆板醤と甜麺醤を2:1で混ぜる黄金比率を覚えておこう。火加減は強火が鉄則だが、豆腐を入れたら優しく混ぜるのがコツ。最後に水溶き片栗粉を加える時、鍋を火から外しながら回し入れればダマになりません。
餃子作りで失敗する最大の原因は具材の水分。白菜は塩もみ後、しっかり絞るのが命です。包む時に端から空気を抜きながら閉じると、焼いた時に破裂しない。焼き餃子は「水蒸し焼き」がプロの技。フライパンに油をひき、餃子を並べたら大さじ2の水を回し入れ、すぐに蓋。蒸気が立ったら蓋を取り、カリッとするまで焼き上げます。
青椒肉絲は家庭でこそ輝く料理。肉は冷凍状態のまま繊維に逆らって切ると柔らかく仕上がる。下味は醤油・酒・片栗粉の順に揉み込み、最後にごま油でコーティング。ポイントは強火で一気に炒めること。肉の色が変わったら一旦取り出し、ピーマンを炒めてから再合流。これで肉が固くなりません。
最後に杏仁豆腐。本場では杏仁霜を使いますが、入手困難ならアーモンドパウダーと牛乳で代用可能。ゼラチンより寒天で固めると口溶けが本格的。仕上げに桂花醤(キンモクセイのシロップ)を垂らせば、高級店の味になります。
中華調理の本質は「鑊気(ウォッキー)」と呼ばれる鍋の熱気を食材に移すこと。家庭では鍋を十分に熱してから油を回し入れ、煙が立ち始めたら材料投入。この一手間でプロの香りが生まれます。明日の夕食から、あなたのキッチンが小さな中華街に変わりますよ。
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