歯周病って、気づかないうちにじわじわ進行する怖さがありますよね。アメリカに住んで長くなりますが、ここでは成人のほぼ半数が何らかの形で歯周病に悩んでいるという統計を見た時は正直ゾッとしました。初期の歯肉炎ならまだしも、進行した歯周病は骨を溶かし、歯を失うだけでなく、全身の健康リスク(心臓病や糖尿病との関連も指摘されています)まで跳ね上がる。歯医者さんから「もっと早く来てほしかった」と言われた友人の悔しそうな顔が、今でも頭に焼き付いています。
予防の最前線は、やはり毎日の歯磨き。ただ、アメリカのドラッグストアの棚は歯磨き粉の種類が多すぎて、正直どれを選べばいいか迷子になります。フッ素入りは基本中の基本で、エナメル質強化に欠かせません。でも、歯周病予防を意識するなら、それだけじゃ足りない気がするんです。ここ数年で特に目立つのが、「抗菌」や「歯茎ケア」を強く打ち出した製品の増加。トリクロサンは規制が厳しくなりましたが、代わりに亜鉛塩(乳酸亜鉛など)やCPC(塩化セチルピリジニウム)といった成分が、プラークコントロールと歯肉の炎症抑制を目的に配合されるケースが増えています。ある歯科衛生士さんが「フッ素で歯を守りつつ、これらの成分で歯茎の敵=細菌の増殖を抑える、そのダブル効果が鍵よ」と教えてくれた言葉が印象的でした。
天然成分派の台頭も無視できません。ティーツリーオイルの抗菌作用、アロエベラの鎮静・治癒促進効果を謳うオーガニック系の歯磨き粉も一定の人気を集めています。ただ、個人的な体験談ですが、天然=必ずしもマイルドではないことも。あるブランドを試したら刺激が強く、かえって歯茎がヒリヒリ…。効果を実感するには、成分表をしっかりチェックし、自分の口腔状態に合うかどうかが大切だと痛感しました。結局、歯周病ケアの歯磨き粉選びは「万能薬」を探すより、「今の自分に必要な機能」を見極める作業なのかもしれません。
しかし、いくら良い歯磨き粉を使っても、それだけでは歯周病は防げないのが現実です。アメリカの歯科医師会(ADA)も強調しますが、歯磨き粉はあくまで「ツール」。効果を引き出すのは正しいブラッシング技術と、デンタルフロスや歯間ブラシによる歯間清掃の徹底。特に歯と歯茎の境目(歯周ポケットの入り口)に、45度の角度でブラシを当て、小さく振動させる「バス法」は基本中の基本。面倒でも、この一手間が数年のちの歯茎の健康を左右します。定期的なプロフェッショナルケア(クリーニング)で自分では落とせない頑固なバイオフィルムを除去してもらうのも絶対条件。良い歯磨き粉は、この「日常ケア+プロのケア」という土台の上で初めて真価を発揮するサポーターなんです。
歯周病との戦いは地道な積み重ね。アメリカで様々な製品を試し、歯科医師のアドバイスを受けながら気づいたのは、結局は「一貫性」が何より重要だということ。その日の気分でケアをサボったり、フロスを省略したりするクセが、知らぬ間に歯茎をむしばむ。高価な歯磨き粉より、自分が無理なく続けられる習慣と、信頼できる成分を選ぶこと。健康な歯茎は、一晩で手に入るものではなく、今日からの小さな選択の積み重ねが未来の口元を形作っていくのだと思います。
|